理学1 体幹の筋力トレーニング・下肢の筋力トレーニングをした群によるバランス能力の違い
高下智己 久吉雄斗 田原寛泰 木村日薫 大野萌
出雲医療看護専門学校 理学療法士学科
Key word:バランス能力、筋力トレーニング、高齢者
- はじめに
超高齢社会における高齢者に対する理学療法の需要が高まっている。又、授業で高齢者の転倒による骨折が多いこと、転倒リスクの軽減にはバランス能力が影響すること、バランス能力には体幹筋力と下肢筋力が影響することを学んだ。本研究では、より効果的にバランス能力の改善を図るにはどちらの筋力トレーニング(以下:筋トレ)を行うと良いのかを検討する。
- 方法
本校の理学療法士学科1,2年生を対象にアンケートを実施。10~20歳代の男子20名を対象に、閉眼片脚立位時間(以下:片脚立位)を計測した。
両側1分を超えた者を除外し、18人を選出。ランダムに9人ずつ選別し、それぞれ体幹筋トレ・下肢筋トレを2週間行ってもらい再び片脚立位を計測した。
- 結果
それぞれ左右の平均値を比較し、t-検定(一対の標本による平均の検定ツール)を行った。
【下肢】
右23.49s→33.42s 左38.05s→39.42s
P値は右0.193、左0.890で両側共に有意な差は見られなかった。
【体幹】
右19.51s→22.10s 左32.58s→25.67s
P値は右0.577、左0.494で有意な差は見られなかった。
- 考察
結果から、平均値は変化したが、結果に有意な差は見られなかった。鈴木らは、片脚立位時の立脚側体幹筋においては、両脚立位と比べて、主に内腹斜筋、腰部多裂筋の活動が増大し、胸部脊柱起立筋、腰部脊柱起立筋は変化が少ないことが示された。と述べている。このことから脊柱起立筋の筋持久力の変化は、片脚立位でのバランス能力検査では計測が困難であると考えられる。
松田らは、骨盤を安定させるために外転筋群はかなりの強度で急速に活動する。と述べている。又、猪飼は、日常生活で十分使用されている筋は訓練を行っても大きな効果は得られにくいと述べている。このことから中殿筋筋力が増加したことにより、骨盤の安定性が向上し、平均値が増加したと考える。しかし、2週間という最低限の期間では、有意差がみられるほどの大きな効果は得られなかったと考えられる。
どの検査においても後から行った左片脚立位の結果がよかった。又、検査結果のばらつきが大きかったため、分散が大きくなり有意な差がみられなかった可能性があると考えられる。
- まとめ
今回の研究から、筋トレとバランス能力の関係を明らかにすることが出来なかった。
被験者数が18人と少なく、記録が低い人のみを選別することが出来なかったため、被験者数を増やして研究する必要があると考える。その他に、筋力や重心動揺の測定、秒数上限の再設定など様々な課題が見つかった。これらを改善し、高齢者のバランス能力の維持向上につながる研究を模索していく。