Blog

ブログ

臨工1 医療安全におけるコミュニケーションの重要性

板垣宇音, 和田優希

出雲医療看護専門学校 臨床工学技士学科

Keywords: 医療安全, 医療事故, コミュニケーションエラー体感型ボードゲーム

 

 

1. はじめに

医療の現場において医療事故はゼロにならないのが現状である.その中で起こる医療事故にはコミュニケーションエラーによるものが多いと言われている.学生は臨床に従事する前にコミュニケーションに慣れておく必要がある.そこで本研究では,コミュニケーションエラー体感型ボードゲーム1)(以下BGに省略)を用いてトラップを含んだ問題を出題し,コミュニケーションに対する意識によって正答数に違いがみられるか調査した.

 

2. 方法

A専門学校在籍の2年生15名,3年生34名の合計49名を対象にBGを実施した.また,アンケートによってコミュニケーションに対する意識について調査し分析した.BGは5問出題した.指示文章にはトラップが含まれていて判断に迷うような設問になっている.例を表1に示す.

 

表1 トラップ内容と指示文章の例 Q1

トラップの内容 指示文章
希釈して使う薬剤だが,指示内容に含まれていない. HD治療中の鈴木大和さんにナファモスタット20㎎を投与してください.

 

3. 結果

コミュニケーションが「得意」と答えたグループ(28名)と,「苦手」と答えたグループ(21名)に分け,BGの正答数を比較した.前者の平均値は3.0±1.6,後者の平均値は3.1±1.5となり,有意な相関関係は認められなかった.

また,臨床実習経験のある3年生の正答数は2.9±1.7,経験のない2年生の正答数は3.4±1.3であり,実習経験の有無による違いも見られなかった.

アンケートより,コミュニケーションを取る上で何が大事かという質問に対して,「伝え方の工夫」が最も多く20名,「思いやり」が5名となった.

 

4. 考察

「得意」グループと「苦手」グループの比較,および2年生と3年生の比較において,どちらも正答数に違いはみられなかった.しかし,最も正答率が低かった設問では,3年生のみ正答していた.設問によっては実習経験がある方が有利となるのではないかと考えられ,今後の検証が必要である.また,正答数の平均値は,3年生より2年生のほうが高かった.3年生は知識や経験があるために,逆にコミュニケーションの妨げとなっているのではないか.2年生は実践経験が不足しているためコミュニケーションに重きを置いたのではないか.こちらも今後検証していきたい.

 

5. まとめ

今回の研究を通してコミュニケーションの得手不得手とBGの正答率との相関関係は見られなかった.また,学年別の正答数の違いも見られなかった.今後,質問項目や回答人数を増やして調査を行う.また,BGが医療安全教育に効果があるかどうかも検証していきたい.

 

参考文献

1)コミュニケーションエラー体感型ボードゲームを用いた卒前医療安全教育の試み,前田 佳孝 他,医療教育2020,51(5),585‐589

 

抄録のダウンロードはこちらから