理学2 歩きスマホの難易度と接触回数の変化
荒木雅玖斗 岩田妃那 藤原佑真 三原寛也 山崎新大
出雲医療看護専門学校 理学療法学科
Keywords:歩きスマホ、通常歩行、接触回数
1.はじめに
歩きスマホによる事故や、注意喚起のポスターをよく目にする。そこで歩きスマホの難易度によって危険性がどのように変化するのか気になった。先行研究では直線歩行のみの研究を行っており、本研究では先行研究を元に実際の環境に近い障害物や方向転換を含むコースでの歩行時間・障害物への接触回数・動物イラストの理解度を計測し、危険性について検討する。また、リハビリへ応用ができるとの文献から、異なる課題を実施し、危険性やリハビリへの実用性を明らかにしていく。
2.方法
出雲医療看護専門学校の学生20歳以下の男性20名、女性10名の合計30名を対象にアンケート調査を実施し、①年齢②性別③歩きスマホの経験の有無④歩きスマホ時の使用アプリを調査する。対象者全員にスマホなしでコースを歩いてもらい、その後動画群と、スクロール群で歩行時間と障害物への接触の有無を計測する。
3.結果
歩行速度はスマホなし(28.06±2.93cm/sec)より、スマホあり(32.55±4.63cm/sec)で歩行速度の減少がみられた。接触回数はスマホなし(0.19±0.34回)より、スマホあり(0.48±0.76回)で増加がみられた。しかし、スマホありで接触回数が減少した被検者もいた。スマホ操作の難易度別の接触回数の増加数と正答数についてt検定を行った結果、接触回数(p=0.85)、正答数(p=0.51)で有意差はみられなかった。
正答数と接触回数の相関係数は動画群(-0.40)スクロール群(0.02)となった。
4.考察
結果から動画とスクロールの難易度の差では接触回数や正答数に変化は無かった。結果に述べた接触回数が減った被検者は、スマホなしの時点でコースを学習してしまい、接触回数が減ったと考える。
先行研究より、歩行速度はスマホなし(135.3±14.2cm/sec)より、スマホあり(111.4±12.8cm/sec)で21.45%減少したのに対し、本研究では14.88%の減少であった。それにより、直線での歩きスマホに比べ、障害物ありの方で減少が小さかった。理由として課題が簡単だった事、一回目でコースを学習した事、先行研究では障害物無しの直線での研究のため、無意識下での歩行が可能になり、注意がスマホに向いていた。しかし、本研究では障害物がある事で歩行に注意が向いたため減少率が小さかったと考えられる。
正答数と接触回数の相関について、動画群では負の相関があり、スクロール群では相関はなかった。動画群では接触の際に画面から目を離したり、注意が障害物に移り、課題に対しての記銘と保持が障害されるため、接触回数が増加すると正答数が低下すると考えられる。スクロール群は接触を起こしても見直しが容易なため影響が少なかったと考える。
5.まとめ
この研究を通して、曲道や障害物のある環境での歩行速度や危険性について知る事ができた。リハビリでの活用には、スマホ操作の方法によって結果に差異が生じる事を考慮する必要がある。